伝説的な剣の達人といえば、まず最初に「宮本武蔵」の名前を思い浮かべる人も多いと思います。生涯を通し、選りすぐりの強者たちと60回以上にわたり決闘を行い、1度も負けたことがないという伝説は、350年ほど経った今でも、多くの人たちを驚かせ続けています。
そこで、武蔵について連想されるのは、出生地とされる岡山もしくは兵庫、あるいは、「巌流島の決闘」が行われた山口県下関市などかもしれません。
その一方で、決闘に明け暮れた時代とは違い、自らの人生を客観視し、後世に残すことのできる“作品”に仕上げようとしたのが、熊本時代の武蔵になります。武蔵は熊本市近郊の金峰山のふもとにある霊巌洞にこもり、数々の決闘の中から得た「戦いに勝つためのエキス」を抽出。それを、『五輪書』(ごりんのしょ)という兵法書としてまとめ上げました。
また、熊本時代の武蔵は、絵画や書など、数々の芸術作品を創作しており、それらの作品の一部は、熊本の島田美術館などで鑑賞することができます。
武蔵は、熊本においてその伝説的な生涯に幕を閉じました。決闘を通し武勇伝を刻んだ時代を“動”の武蔵だとすれば、熊本時代の5年間はまさに“静”の武蔵であり、その生涯を通じ研ぎ澄まされた武蔵の感性に触れることができます。
武蔵が“人生の集大成と地”とした熊本を通し、未だ後世に影響を与え続ける「天下無双の剣豪」の真の魅力に触れてほしいと思います。
(宮本武蔵の言葉) 物毎に勝つといふ事、道理なくしては勝つ事あたはず。 (~『五輪書』風之巻より~)
<関連する場所> 霊巌洞(れいがんどう) 武蔵塚公園 島田美術館
<特集ページ ~濃い時間シリーズ~> 熊本ならではの、宮本武蔵との“濃い”時間をつくる。